2017年6月15日木曜日

しあはせの手紙「この世界の片隅に」より

此れは不幸の手紙ではありません
 
 だってほら真冬と云ふのに
 なまあたたかい風が吹いてゐる
 時をり海の匂ひも運んでくる
 道では何かの破片がきらきら笑ふ

 貴方の背を撫づる太陽のてのひら
 貴方を抱く海苔の宵闇
 留まっては翔び去る正義
 どこにでも宿る愛

 そしていつでも用意さるる貴方の居場所


ごめんなさい
いま此れを讀んだ貴方は死にます


 すずめのおしゃべりを聞きそびれ
 たんぽぽの綿毛を浴びそびれ
 雲間のつくる日だまりに入りそびれ
 隣に眠る人の夢の中すら知りそびれ
 家の前の道すらすべては踏みそびれ

 ものすごい速さで
 次々に記憶となってゆくきらめく日々を
 貴方はどうすることもできないで

 少しづつ 少しづつ 小さくなり
 だんだんに動かなくなり
 歯は欠け 目はうすく 耳は遠く
 なのに其れをしあはせだと微笑まれ乍ら

 皆が云ふのだからさうなのかもしれない
 或ひは單にヒト亊だからかも知れないな


貴方などこの世界のほんの切れっ端に過ぎないのだから

 しかもその貴方すら
 懐かしい切れ切れの誰かや何かの
 寄せ集めに過ぎないのだから

 どこにでも宿る愛
 変はりゆくこの世界
 あちこちに宿る切れ切れのわたしの愛
 ほらご覧 いま其れも貴方の一部になる

例えばこんな風に

 今わたしに出来るのはこのくらゐだ
 もうこんな時
 爪を立てて誰の背中も掻いてやれないが
 時々はかうして思ひ出しておくれ



こうの史代『この世界の片隅に(下)』双葉社 2009年
4月最終回 「しあはせの手紙」p.141~152 より

共謀罪について

【日本国憲法41条】国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

こう憲法に書いてあるの。だからアホな法案成立を防ぐには、選挙でアホな議員を落とすしかなかったわけ。でも落とせなかったの。2014年12月14日衆院選がその最後の機会だった。すべて自分らで蒔いた種。

もっとも、日本国憲法のテキストが無事なうちは、実害出たら違憲訴訟やる手はまだある。安保法制も違憲訴訟やってるでしょ。憲法によって、統治権力は精神的自由を国民に保障しなければならない。だから、共謀罪の目立った運用は改憲後だ。まだ手も足も出せない状況じゃない。諦めないことだ。

憲法が無事ならまだ息の根は止まってない。万一、改憲したらトドメだね。全部が自民党憲法草案 にならなくても緊急事態条項が入ればいい。 緊急事態宣言下での共謀罪の運用がどういう意味を持つか、近現代の日本史を参照してよく考えてみるといい。

2017年5月28日日曜日

児童虐待の現状

児童虐待については、20年くらい前の夜学に通いだした頃にも関心をもっていた。今一生さん企画の新編『日本一醜い親への手紙』(仮題)を知ったのをきっかけに、調べ直してみた。

数値で見る限りでも、思ったより酷くなっている。「全国の児童相談件数の推移」(平成28年8月4日、厚生労働省)によると、児童虐待の相談件数はこの20年間で100倍にもなっていた。平成27年度には10万件を超えている。

(クリックすると拡大します。) 


子供が虐待死する深刻なケースは、平成25年に69件。5日に1人のペースで子供が虐待によって死んでいることになる。平成19年は最悪で、なんと142人の子供が虐待で死んだ。2〜3日に1人の割合である。

(クリックすると拡大します。)


啓発や法整備により、社会的認知が広まったことによって相談・報告が増えたことも事実で、これについては大きな成果である。しかし、一方で対応が追いつけないということも想像できる。例えば、10年くらい前、茨城県職員に話を聞いたときは、児相1人あたりの担当数は40件以上とのことだった。あれから10年。「茨城県における児童虐待の状況」(平成27年4月1日、茨城県)を見ると、相談件数は約2倍になっている。件数増加に応じて対応能力を強化してはいるのだろうが、県の財政状況からみて十分な人的資源を手当できているとは思えない。

それに捕捉率が高まったとはいえ、これらの数値はあくまでも「相談件数」「報告件数」である。つまり、「最低でもこれだけある」ということだ。また厚労省が定義する児童虐待は、①身体的虐待、②ネグレクト、③性的虐待、④心理的虐待の4類型だけである。経済的虐待(子供からの経済的搾取)や、文化的虐待(極端な政治思想、信仰の強制で子供を社会的な孤立に追いやること。)はカウントされない。実数はわからないのだ。

繰り返すが、捕捉率が上がったことは成果であろう。標語的あるいは類型的な啓発には意味があった。しかし、せっかく捕捉しても対応できなければ、意味は薄れてしまう。報道されるような深刻な児童虐待のケースでは、「児相にも相談したのに」という声を聴くことが少なくない。端的に対応不足の現状を表す言葉だろう。捕捉したケース個別に十分な対応をするための体制づくりが課題であると言える。同時に、現在の捕捉率に満足しないで、限りなく100%に近づけることも必要である。

そのためにはどうしたらいいのか。簡単にはいかない話だが、『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)は、その大きなきっかけになると思う。当事者が痛みを綴るこの本は、児童虐待の被虐待者についてのより実情的・内面的な理解を社会に広めるだろう。

そういうわけで、私も『新編 日本一醜い親への手紙(仮題)』を応援しています。是非とも出版にご協力を。
■ 新編『日本一醜い親への手紙』(仮題) 企画・編集 今一生

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医療・児童福祉の現場に一冊とかいかがですか?
 
ご希望の方は、以下のリンクを伝って今さんに直接コンタクトしてください。わからなければ私がナビします。ツイッターで @haironeko に投稿して聞いてください。

■虐待された方から「親への手紙」を 公募中!
http://letters-to-parents.blogspot.jp/2017/03/blog-post.html

今一生のブログ
■子どもを守る文化を作れるのは、企業経営者だけ
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